体毛に笑った日
ある日、体毛は思った。
なぜ僕たちは嫌われるのに勝手に伸びるのだろうか。
僕たちが伸びれば伸びるほど、肌上は黒く毛に覆われ、水に濡れれば渦を描き、肌地の王は顔をしかめる。
世界には体毛が限定的にしか伸びてこない肌地がある。
頭、眉、まつ毛、鼻毛、腋毛、そして陰毛程度である。
鼻毛や腋毛は、伸びすぎさえしなければ嫌われることはない。頭、眉、まつ毛の3つに関してはあったほうが喜ばれ、世界の三大体毛聖地と呼ばれている。
しかし僕たちはどうだろう、と体毛は空を見上げた。
僕たちは限られた場所以外の場所に生えている。そしてそのせいで、僕たちの生える肌地の王が、他の肌地の王々に笑われることがある。
僕たちは、無駄なところに生える毛であるとして、他の肌地の王々から『ムダ毛』と呼ばれているらしい。
ムダ毛持ちの肌地の王の戦い
ムダ毛持ちの肌地の王は幾度もムダ毛達を支配しようとしていた。
生えてこないように信号を送ったり、ときには世界伸に祈ったりもした。
しかしそれでも、ムダ毛達は生え続けた。
ある日、肌地の王は、刃を使いすべてのムダ毛達の命を刈った。その翌日、ムダ毛の芽が出現していた。
またある日、肌地の王は、黄色い果実のエキスが練りこまれた凝乳を使ってムダ毛達を溶かした。その翌日、ムダ毛の芽が出現していた。
また違う日には、肌地の王は、粘着性のある魔法具の紙を使い、ムダ毛達を穴から掘り出した。翌日、ムダ毛達は姿を現さなかった。しかし、その数日後、彼らはまた姿を現した。
肌地の王は絶望した。
ムダ毛の討伐を繰り返せば繰り返すほど、ムダ毛達が濃く、太くなり、さらにはその兵の数までも増やしていることに。以前は一つの穴に一本のムダ毛が生えているだけだったのに、今はそこから3本、多いときは4本もの密集地帯になっていた。
肌地の王は絶望した。
肌地の王とムダ毛の女王が出逢った日
ムダ毛のことに悩んでいた肌地の王がその友と話しているとき、女神ケノンの存在を紹介された。
女神ケノンの魔法を使えば、ムダ毛の生息地を限定できるという話だった。
肌地の王はすぐに女神ケノンにこの世界では注文書と呼ばれる手紙と謝礼を送った。
そして、その数日後、女神ケノンが颯爽と現れた。

女神ケノンは白い肌に桃色の装飾の施された服を着ていた。羽も生えていた。
しかし、つるりとしたその衣装とは反対に、内側では知識と技術の結晶の塊のような装備をつけていた。
その技術の結晶の1つから脱毛魔法が出ることを伝えられた。
そして同時に、脱毛魔法の効果が表れるには時間がかかることも知らされた。

こうして肌地の王と女神ケノンによるムダ毛討伐の共同戦線が敷かれることになった。
女神ケノンの助言に基づき、肌地の王がまず討伐予定範囲のムダ毛達を一斉に狩った。そしてその地を冷やし、そこに女神ケノンが脱毛魔法をかけ、再度、肌地の王が冷やす、という手順が取られた。
脱毛魔法には痛さと犠牲が伴う。それを極力なくす方法が、肌地の王による冷却だった。
肌地の王と女神ケノンによるムダ毛討伐戦線に効果が現れたのは、3週間ぐらいした後からであった。
明らかにムダ毛達の再生が遅くなったのだ。
さらに続けると、再生自体が止まり、半年、1年と続けるうち、ムダ毛達は現れなくなっていった。
肌地の王は討伐区域を広げ、女神ケノンは快くそれを受け入れた。
他の戦域でも同じようにムダ毛達は再生が弱まり、最後には復活しなくなっていった。


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