第一章:ムダ毛太郎登場
昔、あるところにムダ毛太郎という男がいたんじゃ。
太郎が11歳の頃じゃった。太郎のタマに一本の毛が生えたんじゃ。
太郎は初めそれをごみだと思ったんじゃ。
しかし、違った。太郎がその毛をつまんで取り上げようとすると、強い痛みがしたんじゃ。
おかしなこともあるもんだな、と太郎は涙をこらえてそれを引き抜いた。
それからのことじゃった。
太郎の体中に毛が生え始めたんじゃ。
太郎が13歳になるころには、それはもうすごい量の毛が生えておった。
太郎の、手、腕、すね、腿、それに胸や腹にも獣のように生えておった。
太郎は恥ずかしくてその毛を隠そうとしておったが、無駄じゃった。
ある日、学校の子どもたちと体育の授業をしているときじゃった。
教師に長ズボンをはくことを拒否され、太郎の腕と脚は、半袖と半ズボンからみんなの目に止まるようになったんじゃ。
そして、その中のおなごが言いおった。
太郎はよく日焼けしとるのお。嫌、ちがう、あれは毛じゃ!太郎のムダ毛じゃ!
その日から、太郎はムダ毛太郎と言われるようになったんじゃ。
第二章:ムダ毛太郎の苦しみ
太郎がムダ毛太郎と呼ばれるようになって、かれこれ数年経った。
しかし、どこに行っても人々の言葉は変わらなかった。
それは、都へ上ったあとも同じじゃったんじゃ。
都へ上がった太郎は、なんとかしようと色々した。
剃刀で剃ってみたり、毛を溶かすという異国の果物の凝乳を縫ってみたり、引っ付く紙を貼って剝がしてみたり。
しかし、それでも無駄じゃった。
太郎のムダ毛は次の日には生え始めた。
そしてある日、都の学校の、太郎の後輩のおなごが言ったんじゃ。
うわぁ、太郎先輩の背中、毛が生えとるじゃ。
そして別のある日、それはもう太郎が社会というものに出て働いている夏の日じゃった。
同じ仕事の場で働いていたおなごが言った。
うわぁ、太郎さん、胸に毛が生えとるじゃ。ありえんじゃ。
太郎はすごく悲しんだ。
でも、なんともできんかったのじゃ。
第三章:脱毛の女神
ムダ毛太郎はもう若くなかった。
ムダ毛と共にかろうじて生きておった。
そんなある日、少し遠いところに住む友だちの次郎と太郎が話しておるときじゃった。
次郎が言った。
脱毛の女神様っちゅうのがおるじゃて。
その女神様の放つ光でムダ毛が生えてこんようになるんじゃ。
ワシもほら、やってもらって、ムダ毛が生えてこんようになったんじゃ。
そうして、太郎は焦る気持ちを抑えながら、脱毛の女神様を家に迎えたんじゃ。
女神様はケノンという名前じゃと言った。
女神様はそれはそれは大変美しい姿をしており、すこし薄紅がかった白いお召し物をしておられた。
そんな女神様が懐から出した黒い紐の先から脱毛の光がでた。
それを何度も何度も、時間をゆっくりかけて女神様は太郎のムダ毛に当てた。
少し痛みはあったが、太郎は我慢した。
いつかオラを馬鹿にしたやつらを見返してやるんじゃ。
そして半年もせんうちに、太郎の体からムダ毛が生えてこなくなった。
太郎の肌はムダ毛がなくて羨ましいもんだなぁとも言いおったやつもおるようになった。
ムダ毛がなくなった太郎は、それはそれは幸せに暮らせるようになったとさ。


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